自衛隊ハ発砲セズ-後編 【後編】
一線で
務む彼らの 眼差しに
銃後の我ら 覚悟や如何に
どうも皆さん、さんそんです。
前回に引き続き「自衛隊ハ発砲セズ」後編です。
前回は「北朝鮮の自称「人工衛星の打ち上げ」が「弾道ミサイルの発射実験」とされる理由」を説明しました。
今回は「日本のミサイル防衛(BMD)の解説と現状」について書いていきます。
どうぞ、お付き合いください。
では、今回北朝鮮が打ち上げたような弾道ミサイルが発射から着弾までどのような段階を経るのか、そして各段階での迎撃方法やそれに関する問題点を説明します。
まず、発射された弾道ミサイルは、上昇(ブースト)段階、中間(ミッドコース)段階、終末(ターミナル)段階の三段階を経て着弾します。
上昇(ブースト)段階
これは発射後、ロケットエンジンが燃焼し、加速している段階を指します。
ピッチャーの手からボールが離れた段階だと思ってください。
発射されたミサイルは早期警戒衛星によって探知され、その後イージス艦や地上に配備されたレーダーによって補足・追尾されます。
この早期警戒衛星を日本は保有していないので、自衛隊は米国の衛星情報を基に対処しています。2014年度予算で早期警戒衛星に必要不可欠な宇宙用赤外線センサーの予算をJAXAに計上していますが、最終的な早期警戒衛星の実用化にはまだまだ時間がかかるでしょう。
2000年までの自衛隊の既存のレーダーではこの段階のミサイルを捉えることができないため、J/FPS-5、通称「ガメラレーダー」と呼ばれるレーダーを開発・配備しました。2009年の北朝鮮によるミサイル発射実験においては弾道ミサイルの追跡に成功しています。
このガメラレーダーは現在、沖縄の与座岳、鹿児島の下甑島、新潟の佐渡島、青森の大湊、に配備されています。
この段階での迎撃は発射後間もないことから敵領空内で行われる可能性が高く、自衛隊は敵基地攻撃能力も無ければ、敵領域での戦闘行為を担保する法律すらないので不可能です。
中間(ミッドコース)段階
これはロケットエンジンの燃焼が終了し、宇宙空間(大気圏外)を慣性航行している段階を指します。
ちょうど、手から離れたボールが打者に向かっている段階だと思ってください。
この段階でミサイルは日本の領空の真上に差し掛かります。
(宇宙空間は領空ではないため、このような表記になっています。)
ここで登場するのが海上自衛隊が誇る”イージス艦”です。
イージス艦とはイージスシステム(弾道ミサイル迎撃システム)を搭載した艦の総称で、海上自衛隊には「こんごう」型護衛艦4隻、「あたご」型護衛艦2隻の計6隻が所属しています。
迎撃方法は、複数のイージス艦や地上のレーダーによって補足・追尾している弾道ミサイルに対して迎撃用のミサイル(SM-3)を発射し、大気圏外で迎撃するというものです。
システム導入後に行われた「こんごう」型の試験では、4隻全てが補足・追尾に成功し、3隻が迎撃に成功しています。
ただ、準中距離弾道ミサイルはブースト上昇が終了した段階で着弾地点推定が出せるのですが、朝鮮半島から日本本土の主要都市までは発射から着弾まで7分程度しかないため、飛来する全てのミサイルを要撃対象とせざるを得ず、ダミーを交えた飽和攻撃を受ければ完全阻止は不可能です。また、今回のように「日本本土に着弾するかどうか」を判断する頃には迎撃のタイミングを逃してしまう可能性があります。
終末(ターミナル)段階
これは、慣性航行を終えた弾道ミサイルが大気圏に再突入し、着弾するまでの段階を指します。
ちょうど打者のスイングゾーンからキャッチャーミットまでの段階と考えてください。
この段階になると、たとえ迎撃に成功したとしても、弾頭の残骸や弾頭内の放射性物質が迎撃国領内に降り注ぐ可能性があります。ですが、これによる環境への影響は、実際にミサイルが着弾したことや核爆発の被害と比べればなんてことないレベルでしょう。
この段階で登場するのが航空自衛隊が誇る防空最後の切り札「ペトリオットPAC-3」です。
今回のミサイル発射での報道でもよく見かけた地対空ミサイルです。
湾岸戦争時にイラク軍のスカッドミサイル(北朝鮮が現在保有しているミサイルの一つ)を撃墜したことで有名となったもので、北朝鮮のテポドン1号の発射をきっかけに導入し、今回でも沖縄本島や宮古島、石垣島に展開しました。
ただし、これもまたダミーを交えた飽和攻撃を受ければ完全阻止が不可能であること、航空自衛隊の所持するPAC-3は日本全国をくまなく防空できるだけの数が揃っていないことという問題点があります。
ここまでが弾道ミサイルの発射から着弾までのシークエンス並びに各段階での迎撃方法と問題点です。
一番良い方法は「相手にミサイルを撃たせない」ことですが、自衛隊は「自衛に必要な最小限度の実力の保持」という枷があり、敵地攻撃能力を保有していません。
見つけたゴキブリは潰せても、ゴキブリの巣を叩くことができない。
これが自衛隊の現状です。
そして、先進諸国の軍事費(防衛費)がGDPの2~4%なのに対して、日本は1%に抑えられています。そして中国は毎年約10%ずつ伸びています。
各種兵装がハイテク化し、コストが高くなっている中で、軍事費が少ないことは必然的に量で劣る戦況を生み出します。それを自衛隊員の技量・練度でカバーしているというのが現状です。
我々が自衛隊の方々にできることの一つとして、
“国防というものを真摯に考え、それを実現してくれる政治家を選挙で選出する”
というものがありあす。
膨張する中国、挑発をやめない北朝鮮、各地でテロを起こすテロリストたち…
これらに対処するために何が必要なのか。それは「攻めてきた相手と酒を飲む」なんてことではないと思います。
皆さんも、ちょっとした時間に考えてみてはどうでしょうか。
難しいようでしたら、コメントしていただいても構いません。陸海空全ての自衛隊に友を持つ私が全力で対応させていただきます。
そして、時間があれば、最寄りの自衛隊の基地・駐屯地へ是非、足を運んで見て下さい。
彼らの姿から、何か見つかるかも知れません。
平成28年2月8日
さんそん
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