すしざんまい社長“だけ”が英雄なのか【国際】
どうも皆さん、さんそんです。
夜分遅くの更新となります。(帰宅してブログ書きながら寝落ちしてたなんて死んでも言えない)
今日はTwitterのトレンドにも挙がった“すしざんまい木村社長が300件の海賊被害を0にした”ということについて私の意見を述べさせていただきます。
まずはじめに、ソマリアの海賊問題についておさらいしておきましょう。
ソマリアはアデン湾、アラビア海、インド洋に面したアフリカ大陸の国です。
国は主に北部のソマリランド、北東部のプントランド、南部ソマリアから成り立っています。海賊はほとんどがプントランドから出撃しています。
北部がイギリスの、南部がイタリアの植民地でしたが、1960年に南北統合のソマリア共和国として独立しました。69年の軍事クーデター後はソマリア民主共和国となり、88年に内戦が勃発。2012年の暫定憲法採択、暫定政府の統治機関の終了を以ってソマリア連邦共和国となりました。
ソマリア沖は世界有数の漁場でありましたが、ソマリア国内に魚を食べる習慣が少なかったことから漁獲は主に輸出へと回していました。1988年の内戦勃発まではバーレ政権の下、漁船や漁港の整備に欧州や日本から支援が行われ、ソマリアの輸出産業の一つとなっていました。
しかし、隣国エチオピアの支援を受けた反政府組織「統一ソマリ会議」との内戦、そして1991年に首都を制圧した統一ソマリ会議の内部分裂によってソマリアは南北に分裂、以後、国連PKOが派遣されるなど、各国から治安維持のために多国籍軍が派遣されはじめました。
無政府状態のため輸出ができず漁民の生活は困窮。さらに、無政府状態をいいことに外国船、特に欧州の船がソマリア沖で乱獲を行い、生活はさらに困窮。また、軍部と欧米企業が結んだ「沿岸に産業廃棄物の投棄を認める」という内容の条約によって産廃投棄が頻発。そのなかに他では処理が難しい放射性物質が多量に含まれていたため、漁師を中心とする地域住民数万人が発病。地域住民の生活を支えていた漁業もできなくなり、この漁民が海賊化したというのが一般的なソマリア漁民の海賊化の経緯です。
一方で、高速船の使用・武装の程度・訓練状況に見られる海賊の態様は漁民の困窮とかけ離れたものであり、海賊達が外国メディアにインタビューを受ける際に、自らを生活に困窮した元漁民と称して同情を引きだし自らの行為を正当化するための組織的な宣伝によるもので、最初から武装集団が海賊を始めたという意見もあります。
2007年以降、海賊行為の成功率や身代金の高さに目をつけた漁民が次々と海賊行為を行い、やがて組織化され、そこに地方軍閥が参入するまでになっています。
日本も例外なく被害を受け、2009年の麻生政権時に海賊対処法が成立、陸海空自衛隊から護衛艦や哨戒機、現地基地の警備・管理部隊や現地への輸送部隊が隣国ジプチへ派遣されました。
これが、ソマリア海賊問題の歴史です。
本題に戻ります。
私はそもそも
すしざんまい木村社長が300件の海賊被害を0にしたというのは誤報
と捉えています。
木村社長がソマリアでの漁業支援に乗り出したのは2012年11月とのこと。
それを踏まえて下記のグラフを御覧ください。
外務省のHPより拝借した全世界の海賊等事案発生状況のグラフです。青色の部分がソマリア沖・アデン湾で発生したものです。
木村社長が支援を始める2011年末の段階ではソマリア沖・アデン湾での海賊事件は大幅な下降傾向にあり、これがあったからこそ木村社長は支援に乗り出すことができたと私はかんがえています。
もちろん、木村社長の行為は賞賛に値するでしょう。
しかし、❝木村社長が❞という表現にはいささか納得しかねます。
2011年から2012年にかけての大幅な事件数減少は、本格化した各国の海上警備活動や現地のNGOの活躍があってこそだと私は考えています。
日本に関連することで言えば、派遣されている自衛隊やソマリアギャングの更生プログラムを小さな事からコツコツ続けてきた「日本ソマリア青年機構」という学生NGOの活躍があります。彼らの活躍抜きに、木村社長が漁業支援を行う事はできなかったでしょう。海上自衛隊の船舶護衛は先日700回目を迎え、今もなお船舶の護衛を続けています。
そして、海賊問題が解決したかに見えた矢先から、外国船、今回はイエメン、イラン、韓国が国際海事法を無視しソマリアの豊かな漁場で略奪を始めているそうです。
今回の木村社長の報道を受けて
「政治では何も解決しない」
「軍事力では平和にならない」
という意見が散見されます。
しかし、日本をはじめ、各国政府の支援やPKO、海上警備艦艇の派遣といったことが、木村社長が前述の漁業支援に乗り出すまでの下地を作ったとは考えられないでしょうか。
政治も軍事も民事も必要なのです。
皆さん、そうは思いませんか。
平成28年1月21日深夜
さんそん
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